仮面ライダー1号・2号【第1作『仮面ライダー』】
特撮テレビ番組『仮面ライダー』は、1971年(昭和46年)4月3日から1973年(昭和48年)2月10日にかけて毎週土曜日19:30 - 20:00に毎日放送・NET(現:テレビ朝日)にて放送された(全98話)。
ストーリー
優秀な科学者でオートレーサーでもある本郷猛(ほんごう たけし)は、その能力を見込んだ悪の組織ショッカーに拉致され、バッタの能力を持つ改造人間(サイボーグの一種)にされてしまった。しかし、脳改造によってその意思を奪われる寸前、ショッカーの協力者にされていた恩師・緑川博士の手引きで脱出に成功した。緑川博士は脱出行の途中でショッカーの怪人・蜘蛛男に暗殺されるが、その遺志を継いだ猛は腰につけたベルトの風車に風のエネルギーを受けて仮面ライダーに変身、ショッカーに立ち向かう。猛は、オートレーサーとしての師・立花藤兵衛や緑川博士の遺児ルリ子、そしてレース仲間であり実は FBI 捜査官としてショッカーを追う滝和也(たきかずや)らの協力を得て、ショッカーの送り出す戦闘用改造人間である怪人たちを次々に倒していった。仮面ライダーに多くの怪人たちを倒されたショッカーは、ライダー打倒のためカメラマン一文字隼人(いちもんじ はやと)を本郷と同型のバッタ型サイボーグに改造するが、一文字は脳改造前に本郷に救出され新たな仮面ライダーとなった。こうして誕生した2人の仮面ライダーは日本と海外に別れて戦い、時には共闘しながら、ライダーガールズや少年仮面ライダー隊、多くの仲間たちの協力を得てショッカーと戦っていく。
概要
全仮面ライダーシリーズ中、最も長期間放送した作品であり、未だその記録は破られていない。石ノ森章太郎が原作を担当し、少年向け雑誌「週刊ぼくらマガジン」(後に「週刊少年マガジン」に連載誌を変更)に連載を開始した。
第1回の放送の関東での視聴率は8.1%(裏番組に『お笑い頭の体操』があったため)だったが、関西では20.5%を記録。その後ゴールデンタイムのドラマによく出演していた売れっ子の佐々木剛が主役の2号ライダーになり、変身ポーズの導入など種々のテコ入れが功を奏し人気爆発。着実に視聴率を伸ばし、9月末頃には平均して関東でも15%、関西では20%の視聴率を超えるようになった。全98話の平均視聴率は関東が21.2%、関西が25.9%(プロ野球中継のため翌週の金曜19:30 - 20:00に振り替え放送された69話(1972年7月28日放送)を除く)、最高視聴率は関東が30.1%(1972年1月8日放送)、関西が35.5%(1973年2月10日放送)。(ビデオリサーチ調べによる)
カルビー製菓(現:カルビー)の仮面ライダースナックに付いていた仮面ライダーカード、ブリヂストン自転車から発売された仮面ライダー自転車、ポピー(現バンダイ)から発売された仮面ライダー変身ベルトといったキャラクター商品も大ヒットし、仮面ライダーは社会現象として大人向けのメディアにも頻繁に取り上げられた。
仮面ライダー誕生まで
「仮面ライダー」の企画は、1970年初頭に書かれた企画書「マスクマンK」までさかのぼる。この企画書で、仮面のヒーローが秘密結社ショッカーと戦うという基本線はすでに決定していたが、主人公・九条剛が普通の体育教師で鍛錬によってヒーローとしての力を得ているなど、当時流行していたスポーツ根性ものの影響が強く見られていた。次に提出された「仮面天使(マスクドエンジェル)」では、主人公の名が本郷猛に決まり、恩師緑川教授殺害の容疑をかけられた逃亡者という設定になった。また、主人公は高圧電流の事故で特異体質となり、人間以上の力を得ているというSF的な設定が加味されている。
この「仮面天使」の企画書はさらにドラマ性が高められ「クロスファイヤー」となる。ここで構想されたストーリーでは、本郷を父の仇と信じるヒロインや、殺人者・本郷を追う刑事などの登場人物が配され、主人公の逃亡者としての苦悩が一段と強化された。主人公の仮面については、怒りの感情が高まると顔に感電事故による十字形の傷跡が浮かび上がり、それを隠すためにかぶっているというドラマチックな設定が加えられている。石森章太郎が原作者として本格的に参加するのはこの段階あたりと思われ、クロスファイヤーの姿などのスケッチが現存している。
一方、石森は自身の作品『スカルマン』をこの企画に応用した「仮面ライダースカルマン」も提案していた。ここで、主人公が敵怪人と同じ改造人間であるという設定が確立し、逃亡者の設定や一部のキャラクターが整理されてよりシンプルな物語としてほぼ完成した。しかし、テレビ局サイドから「モチーフがガイコツでは営業上の支障がある」との意見が出され、企画はさらなる検討を求められる。ここで石森は、バッタの顔が髑髏に似ている事に気づき、バッタをモチーフにしたヒーロー案を提示。この案も局内には非力な昆虫をモチーフにすることに懸念の声があったが、石森は「バッタは小さいから強く見えないだけで、(昆虫の能力が)人のサイズになれば強い」と説得し、最終的に認められた。マスクのデザイン案は、いくつかの候補を石ノ森が息子に見せ、石ノ森自身は一番不気味だと思っていたものがいいと言ったのでそれに決定したという。
以上の経緯により完成を見た本企画は「仮面ライダーホッパーキング」の仮題を経て「仮面ライダー」のタイトルで製作が決定された。
放映開始後の展開
紆余曲折を経て開始された「仮面ライダー」であったが、当初は順風満帆とは行かなかった。
前例のない形式の番組の制作は試行錯誤の連続であったが、その最中の第9、10話の撮影中、本郷猛役の藤岡弘が、バイク走行シーン撮影中に転倒事故が発生(近年になって、この事故は藤岡自身がスタントマンを使わず撮影を行なっていた為と語っている)、複雑骨折で全治3 - 6ヶ月の重傷を負い、当然の事ながら撮影に参加する事が暫く不可能な状況に追い込まれた(藤岡は第1話放送時は既に入院中で、病院で視聴していたという)。
番組開始早々にして訪れた危機的状況の中で、更に第1話の視聴率は、キー局のある関西地区では20.8%とまずまずであったが、関東地区では8.1%にとどまるという厳しいものであった。
ここで番組は、既存のエピソードから流用した藤岡の映像と声優の納谷六朗による吹き替えで本郷猛を『演じさせ』、そして変身後のライダーのシーンを増やし、さらに新キャラクター・滝和也の活躍をつなぎ合わせるなどの措置で急場をしのぐことになる。その間に、番組の方向性についての再検討と新たな主役の扱いが討議された。現存する会議録によれば、原作漫画同様に本郷が戦死する案をはじめとして様々な展開が検討されている。また、関係者内ではライダーを巨大化させるという声もあったと言う。
その結果、「本郷猛は急遽外国のショッカー支部との戦いに赴き、その後を継ぐ新しい仮面ライダーが登場する」という形の新展開が決定し、新主役・一文字隼人には佐々木剛が選ばれた。佐々木は当初劇団 NLT で同期であった藤岡の役を奪うことに難色を示していたが、「藤岡が復帰するまでの代役」という条件で引き受けたという。また、主役交代を機にそれまでの反省点が一気に修正されることになる。
・舞台をスナックからレーシングクラブに移し、レギュラーヒロインを増やすなどドラマの雰囲気を明るくした。
・一文字隼人を、本郷猛よりもユーモラスで都会的なキャラクターに設定し、ヒーロー性を強化した。
・仮面ライダーのデザインをやや派手なものにして、キャラクター性を強化すると共に、夜間撮影時の困難を避けるため暗闇にとけ込みにくい配色にした。
・仮面ライダーに変身ポーズを設定し、一文字の意思による能動的な変身を取り入れた。
このような経緯によって仮面ライダー2号が登場し、番組の中に複数のヒーローが存在するという世界観が確立される。また、主役交代に合わせて番組強化策を一気に実行したため、番組強化にありがちな舞台の急変や主人公の性格変更に伴う違和感を払拭できたのは、不幸中の幸いであったといえる。その後9ヶ月間は2号が主人公となり、地方ロケによる舞台の拡大や、大幹部の投入によるショッカー側の強化などの展開が順調に行われ、番組の人気は急上昇していった。特に、変身ポーズの発明は児童層への影響が絶大であり、脚を開き、両腕を大きく動かしながら「変身!!」と掛け声を叫ぶ2号の変身ポーズはたちまち子供達の間で流行してブームを盛り上げた。
やがて、1972年正月からは藤岡の治癒によって1号ライダーのゲスト出演エピソード(いわゆる「ダブルライダー編」)がイベント的に挿入されるようになり、同年4月には一文字隼人がショッカーを追って南米へ向かったという設定の元、スタイルを一新し新たな変身ポーズ(掛け声は2号との差別化のため「ライダー・変身!!」)も得た新1号ライダーが満を持して主役に返り咲いた。
ヒーローが2人いる(ダブルライダー)という展開は、物語世界の拡大をもたらし、次作『仮面ライダーV3』やその後の仮面ライダーシリーズが長期にわたり人気を得る原因となったと考えられる。2号の登場がなければ、孤独な変身ヒーローを描いた単発作品で終わっていた可能性もある。さらにはこの「複数ヒーロー」のコンセプトは『秘密戦隊ゴレンジャー』をはじめとするスーパー戦隊シリーズへと受け継がれ新たな展開を示すなど、まさしく「怪我の功名」といえるだろう。
また、変身ポーズは、後の仮面ライダーシリーズ、さらには他の特撮ヒーローものにおいて、もはや定番パターンとして受け継がれ、これもまた藤岡の負傷にはじまる主役交代劇が残した思わぬ遺産であった(佐々木剛が自動二輪の免許を持っていなかった為、苦肉の策であった)。
この路線変更以降、初期の物語が持っていた仮面ライダーの「異形」という要素は徐々に影を潜めて行った。そして、2号から新1号へ、そして次作『仮面ライダーV3』以降へとシリーズを重ねながら仮面ライダーというブランドのヒーローは徐々に姿を変えていった。ヒーローとして、キャラクターとして、あるいは戦闘に特化した姿としての洗練されたデザインになっていったのである。
その一方で、番組初期のテーマであった「改造人間の苦悩」というテーマは後のシリーズにおいても、怪人と同等の存在になってしまった者(『BLACK』のシャドームーン = 信彦)、戦いの宿命を背負ってしまった者(『アギト』のギルス = 葦原)、あるいは「戦うためだけの存在」になってしまった者の苦悩(そうなりゆく事への苦悩、として『クウガ』の雄介など)といった形でしばしば取り上げられている。
ストーリー面では現在の視点で見れば不自然な演出や矛盾した展開も多いのは否めないものの、しかしそれを補って余りある魅力を見せ、そして現在の特撮ヒーローの原型となった事は大いに評価出来る。
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